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【法律講座】相続法改正~遺産分割に関する見直し~ その①

2019.11.20

土地活用コラム

改正相続法につき、今回は遺産分割に関する見直しとして、新設された預貯金の一部払い戻しの制度と、相続開始後遺産分割前に一部の相続人によって遺産が処分された場合の不公平を是正するための制度をご紹介します。

【1】預貯金の一部払い戻しの制度

 従来、「預貯金債権は相続発生と同時に当然に法定相続分に従って分割されるもので、遺産分割の対象とはならない」とされてきましたが、平成28年12月19日に出された最高裁の決定がこれを変更し、「預貯金債権は相続発生と同時に当然に法定相続分に従って分割されるものではなく、遺産分割の対象に含まれる」と判示しました。これにより、相続人間で遺産分割協議がまとまらなければ被相続人が有していた預貯金を下ろすことができず、葬儀費用の支払いなど喫緊の需要に対応できなくなるという不都合が生じます。

 そこで、改正相続法ではこのような不都合を回避するため、遺産分割前であっても、各相続人が、金融機関に対し、被相続人の有した預貯金につき一定の金額を払い戻すよう請求できる制度を設けました。
 この時、金融機関から払い戻すことができる金額は、「相続開始時の預貯金債権額×3分の1×権利行使者の法定相続分」という計算式で導き出される金額です。ただし、「預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする」という制限がついており、この法務省令で定める金額が「150万円」と決まりましたので、1つの金融機関につき150万円までが上限となります。そして、このように遺産分割前に払い戻しを受けた分については、その相続人が遺産の一部分割として取得したものと扱われます。
 この改正は、令和元年7月1日から施行されますが、それ以前に相続が発生した場合であっても、金融機関に対する請求が令和元年7月1日以降であれば、払い戻しを受けることが可能です。


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弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表弁護士 田中 智美氏

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